概要
大規模地震や火災、水害(地下浸水)等の各種災害が発生した状況において、建物内の安全が確保できなくなった状況を想定し、一人一人の避難者の動きをシミュレートすることで、在館者が屋外に避難するのに要する時間や渋滞の規模を可視化する。また、避難誘導方法を変更した場合の影響や効果を比較し、避難誘導計画の策定や関係者間の合意形成を支援する。
目的
- 実現象としての再現が困難な様々な災害シナリオや避難者属性を考慮した避難状況の可視化と課題抽出。
- 課題解説策として避難誘導方法等を変更した場合の避難時間や渋滞状況への改善効果検証。
- 関係者間のイメージ共有促進による避難誘導計画策定と合意形成の効率化。
課題への解決策
一人一人の避難者の振る舞いを表現し、避難者同士の相互作用を考慮できるマルチエージェントシミュレーション手法により、各避難者の避難行動をシミュレートする。各時刻における各避難者の位置座標を3Dモデル上に可視化することで、避難性状をアニメーションで可視化する。避難誘導方法を変更して数パターンのシミュレーションを実施し、各パターンのシミュレーション結果について「①避難完了人数の推移」、「②避難所要時間分布」等を集計し、比較検討を行い、対策効果の検証を行う。
適用技術、ツール(システム)
マルチエージェント人流シミュレータ(LS-MACS)
適用データ:どんなデータを用いるか?
- 建物図面(各階平面図、立面図等)
- 各階の属性別要避難者数
検討事例
概要
高層ビルにおける避難誘導方法の検討
検討内容
高層ビルでは、火災が発生したとしても消防設備が作動することにより、被害範囲は限定され、避難が必要となるのは一部のフロアや一部の区画に限定されるのが一般的である。一方、大規模地震が発生した場合、建物内の安全が確保されるならば、むやみに屋外に避難をするのではなく、建物内に留まるのが原則である。しかし、大規模地震に伴い火災が発生した場合(複合災害)、地震の揺れによって消防設備が故障してしまい、正常に作動せず、火災延焼が拡大してしまう可能性がある。この場合、建物内の全員が屋外に避難する『全館避難』が必要となる。しかし、高層ビルでは、大規模地震が発生すると長周期地震動(揺れが1往復するのにかかる時間が長い大きな揺れ)が生じ、大きく長時間揺れ続け、什器(家具等)が転倒や大きく移動することで、負傷者が多数発生する可能性がある。これらのことから、本検討では、大規模地震発生時に高層ビルで全館避難が必要となった場合において、負傷者を含め、在館者全員を安全に屋外に避難させるための適切な避難誘導方法を検討するために、複数の避難誘導シナリオを想定し、マルチエージェントシミュレーションを実施して比較検討した。

図2 対象施設概要と避難者属性設定

図3 検討した避難方法
検討結果






関連動画
関連実績/適用実績
2020 大学キャンパス校舎の火災避難シミュレーション業務
2018 火災時における地下街の3D避難シミュレーション
2018 大規模複合施設における避難検証シミュレーション業務
2016 地下街安全避難対策に係わる浸水避難シミュレーション検討
2015 地下駅の浸水避難シミュレーション検討
2015 大学キャンパス校舎建設設計に伴う火災避難シミュレーション業務
2014 伊豆大島津波避難施設シミュレーション検討
2013 BIM連携による庁舎火災避難シミュレーション解析
2013 地下街安全避難対策に係わる浸水避難シミュレーション検討