概要
駅前バスターミナルにおいて、バスの到着時刻がバス待機列に及ぼす影響を評価できるような歩車連成デモシミュレーションを行った。ステークホルダーの合意形成の円滑化を目指して、ゲームエンジンを用いてシミュレーション結果のインタラクティブな3D可視化を行った。
背景・課題・ニーズ
- 背景:近年TOD型の再開発事業が増えており、交通に関する地域課題の解決が図られている。
- 全体課題①:交通に関する計画に対して、多様なステークホルダーが存在し、合意形成に時間を要する。
- 全体課題②:ステークホルダーによって、設計・運用計画に対して重視する検証ポイントが異なる。
- 例:自治体は、駅前広場の交通安全や、回遊性の向上を検証したい。
- バス会社は、自社で運行するバス車両が時刻表通りに運行できることを検証したい。
- 全体課題③:交通結節点では徒歩から電車・バス・タクシーなど、人の交通モードが変化する。車流が人流に及ぼす影響を検証することが重要である。
- 車流が人流に及ぼす影響の例:バスの到着が遅延すると、バス待ちの列が伸びて歩行空間が狭まる。
課題への解決策
- 全体課題①に対して:ステークホルダー間における、イメージ共有の円滑化および合意形成の促進
→シミュレーション結果を3Dで可視化し、解析結果の直感的な理解を促す。 - 全体課題②に対して:ステークホルダーの重視する検証ポイントの網羅
→ゲームエンジンの技術を援用して、シミュレーション結果の画角を、バス待機列やバス動線全体などに切り替えられる形で可視化する。 - 想定される重視ポイント:
自治体:歩行者の交通安全確保を重視する。
→バス待機列および歩行者動線を閲覧できる画角で可視化する。
バス会社:渋滞がなくバスが定時運行できることを重視する。
→バス動線を俯瞰できる画角で可視化する。 - 全体課題③に対して:車流が人流に及ぼす影響の検証
→車両シミュレーション結果を人流シミュレーションの入力とすることで、車流が人流に及ぼす影響を解析する。
適用技術、ツール(システム)
車両SIM:ADVENTURE_Mates | バスおよび一般車両の車流を解析する。 |
歩行者SIM:P-MACS | 車両SIMの結果を受け取って入力値とすることで、車流が人流に及ぼす影響を含めて解析する。 |
3Dオブジェクト作成:Maya | 3D可視化に必要なオブジェクトを作成する。 |
ゲームエンジン:Unity | 3D可視化用のプログラムを作成する。 |

図 概念図
適用データ
- シミュレーション空間データ(車両動線、バス停位置、歩行者空間モデル)
- 交通データ(信号現示パターン、交通量、公共交通機関の時刻表)
- 3D可視化用データ(背景テクスチャ、歩行者・車両・バス停・構造物等のオブジェクト)
実施結果
バスターミナルにおける歩行者のバス乗降および歩行者滞留、車両滞留について連成シミュレーションを行い、その結果を3D可視化した。

図 人流シミュレーション結果

図 車流シミュレーション結果
まとめ
- バス車両の到着時刻に応じて歩行者の待機列が変化する現象を表現した。
- 歩行者の交通安全やバスの定時運行など、ステークホルダー間で異なる重視ポイントにフォーカスした可視化を行った。
備考
本ケーススタディにおける車両SIMは、東京大学で開発されている交通流シミュレータADVENTURE_Matesを改編して実施した。
東京大学 ADVENTUREプロジェクト