概要
駅ホームの混雑緩和などを目的として実施されるホーム改修計画に対し、旅客流動シミュレーションを用いて、工事中に設けられる仮囲いの旅客流動への影響や、改修後の混雑緩和効果について事前検証を実施する。
図1 概要イメージ図
背景/課題/ニーズ:
駅の改修工事の計画を策定する場面では、工事中や完成後の旅客流動への影響を検証、評価することが求められる。改修プランが複数案検討されている場合は、それらの複数プランを旅客流動の観点で比較評価した上で、採用プランを選択する意思決定が必要になる。一方、計画を推進する際には、多数の関係者との合意形成を図ることが重要であるが、工事中や計画完成後といった将来のホーム上の旅客流動を関係者間でイメージ共有するためには、わかりやすい可視化が求められる。
目的:
- 「工事中の旅客流動への影響評価」や「現況に対する完成後の改善効果(混雑緩和等)の検証」「複数の検討プランの相対評価」による①問題の早期把握、②計画検討の効率化
- 関係者間のイメージ共有促進による③意思決定/合意形成の効率化
課題への解決策:
一人一人の旅客の振る舞いを表現し、旅客同士の相互作用を考慮できるマルチエージェントシミュレーション手法により、各番線の列車発着時刻を考慮した乗車客、降車客のホーム上の流動をシミュレートする。各時刻における各旅客の位置座標を図面上に可視化することで、旅客流動をアニメーションで可視化する。シミュレーション結果を集計し、①ホーム上の混雑状況の変化、②昇降設備を降車客が通過し終える時間、③各旅客の旅行時間などの評価項目にて定量的な評価を行う。
適用技術、ツール(システム):
駅ホーム上旅客流動シミュレータ(F-MACSホーム版)
図2 駅ホーム上旅客流動シミュレータ(F-MACSホーム版)イメージ図
図3 検討内容の例、評価項目、アウトプット
適用データ:どんなデータを用いるか?
- ホーム図面(ホーム形状、昇降設備配置・寸法、列車停車位置、ホーム上支障物等)
- 各番線の列車の車両編成、発着時刻(扉の開扉時刻、閉扉時刻)
- ホーム上の各昇降設備を利用する旅客数(単位時間あたりの方向別断面交通量)
- 各番線の旅客比率(島式ホームの場合)
図4 適用データイメージ図
検討事例
概要:
ホーム延伸&昇降設備増設計画の検証
検討内容:
対象駅は朝の通勤ラッシュ時に降車客が多く、従来の昇降設備の処理能力では降車客を捌ききる前に、後続列車が到着するという状況であった。そこで、昇降設備を増設するとともに、ホームを延伸して2番線の列車停止位置を移動する計画(延伸距離複数案)が検討され、シミュレーションを用いて改善効果を検証した。
図5 昇降設備増設&ホーム延伸&列車停車位置移動計画の検証動画
上:現況再現シミュレーション 下:計画案シミュレーション
検討結果:
- 新設昇降設備が利用されることにより、既設昇降設備の混雑が緩和する。
- ホーム延伸に伴う2番線の停車位置の移動量によって、新設昇降設備と既設昇降設備の利用人数のバランスが変化する。
- 2番線の停車位置を移動しない場合は、既設の図面右側の昇降設備の混雑は緩和しない。
- 2番線の列車停車位置を図面左側に移動すると、新設昇降設備(図面左側)の旅客利用人数が増える。この移動量を大きくしすぎると新設昇降設備が混雑する。
関連実績/適用実績:
2020年:イベント終了後の混雑緩和施策の検証2(M駅)
2018年:イベント終了後の混雑緩和施策の検証(M駅)
2017年:エレベータ設置による旅客流動影響検証(K駅)
2016年:ESC架け替え工事に伴うホーム上旅客流動検証(S駅)
2016年:イベント時のホーム上旅客流動検証(S駅)
2016年:ホーム上昇降設備改修効果の検証2(O駅)
2015年:ホーム上昇降設備改修効果の検証(O駅)
2015年:ホーム拡幅&階段新設効果の検証(I駅)
2014年:改修計画の比較検証(S駅)
2014年:バリアフリー化計画の検証(O駅)
2013年:ホーム混雑緩和施策検証(N駅)
2013年:ホーム昇降設備改修計画の検証(S駅)
2011年:ホーム拡幅効果の検証(S駅)
2011年:工事中における仮囲いの影響検証(C駅)
特許
【特許番号】特許第5690232号(P5690232)
【登録日】平成27年2月6日(2015.2.6)
【発行日】平成27年3月25日(2015.3.25)
【発明の名称】シミュレータ装置、係数決定装置、及びシミュレータシステム
論文
5306 実現象の定量データを用いたシミュレーションの再現性向上のための全体構想 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その1(群集流動,建築計画I) 5307 駅ホーム上の混雑状況を再現した旅客流動シミュレーションモデルの開発 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その2(群集流動,建築計画I) 5308 シミュレーションパラメータ最適化に関する研究 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その3(群集流動,建築計画I) 5302 ホーム上旅客流動シミュレーションの再現性向上のための歩行モデル改良 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その4(駅・シミュレーション,建築計画,2012年度大会(東海)学術講演会・建築デザイン発表会) 5303 ホーム上旅客流動シミュレーションの最適パラメータ値の精度向上に関する研究 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その5(駅・シミュレーション,建築計画,2012年度大会(東海)学術講演会・建築デザイン発表会) 5304 ホーム上旅客流動シミュレーションのパラメータ最適化に関する研究 : 鉄道駅における旅客流動シミュレーションの精度確保に関する研究 その6(駅・シミュレーション,建築計画,2012年度大会(東海)学術講演会・建築デザイン発表会)関連動画
関連資料
関連企業
- 東日本旅客鉄道株式会社
- JR東日本コンサルタンツ
- ゴーガ株式会社