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商業施設におけるトイレ利用実態調査分析 ~男女ブースと車椅子使用者用トイレの比較~

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概要

車椅子用使用者用トイレと男女ブースの利用実態を調査することにより占有時間等の比較を行う。

本業務は国立研究開発法人建築研究所の「公共建築物におけるバリアフリー設備の適正規模や配置に関する研究」 の一環として実施した。

背景/課題/ニーズ

令和7年6月から「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(国土交通省)」 が施行された。

この中では、施設の階数と面積等で、車椅子使用者用トイレの設置数が規定されており、設置数の増加や機能分散が推進されるものの、その利用実態の把握は十分でないのが実情である。

本稿では、利用実態調査により車椅子用使用者用トイレと男女ブースとの占有時間等の比較結果を報告する(以下、男性トイレ:[MB]、女性トイレ:[WB]、車椅子用使用者用トイレ:[WU] と略記)。

国交省:トイレ、駐車場、劇場等の客席関するバリアフリー基準の改正について(令和7年6月1日施行

目的

洋式化、トイレ内快適性向上により、ブース内のプライベート空間化、スマホ操作利用などが増加している。利用実態が時代とともに変化し、トイレブースの占有時間が変化している。その変化と差異に対応した適切な衛生器具数の算定方法の確立を目的とする。

課題への解決策

6箇所の商業施設においてIoTセンサを用い、全385器具1年間分のトイレ利用データ、884万件を取得し利用回数、占有時間、混雑度の観点で利用状況分析を行う。

調査概要を表1に示す。

調査対象は車椅子用使用者用トイレと男女ブースとし、男性小便器は未計測である。884万件のデータのうち[WU]データは[MB]データの約28%、[WB]データの5%であった。

なお、[WU]利用者が、実際に車椅子使用者だったかは把握できていない。

表1 調査概要

調査対象施設の概要を表2に示す。

対象施設は、1都3県の商業施設6箇所とする。6箇所の内、駅ビルが4施設、残り2施設は低層施設である。表2に示すDTは小規模商業施設、TMは大規模郊外型SCである。

6施設のトイレ箇所数は合計で109箇所 [男36-女  42-車椅子31]で、器具数の合計は385器具[男87-女267-車椅子31]である。器具数およびデータ数は、商業施設のため[WB]が多い。

表2 施設概要(6箇所の商業施設)

適用データ

扉開閉センサや人感センサを用いたトイレ個室の利用実態の計測結果(利用回数、利用時間)。

検討結果1

トイレ利用回数に関する検討を行う。

図1に各施設の面積1000㎡あたりの休日営業1時間平均利用回数を示す。全施設の平均は[MB] 3.2、[WB]17.3、[WU]0.9で、[WU]の回数の割合は、[WB]の5.5%、[MB]の29.4%であった。施設毎の [WB]に対する[WU]の利用比率を見ると、最大の施設がDTで11.5%、最小の施設がSMで1.5%であった。なお、休日のデータを採用したのは、商業施設のため全施設において平日に比べて1日平均利用回数が多かったからである。

図1 1000㎡あたりの営業1時間平均利用回数(休日)

図2に1器具あたりの休日ピーク1時間平均利用回数を示す。全施設の平均は[MB]5.5、[WB]10.7、[WU]4.9で、[WU] の回数の割合は、[WB]の46%、[MB]の89%であった。[WU]は[WB]の約半分、[WU]と[MB]の差は0.6回と小さく、1時間で5回程度である。

図2 1器具あたりのピーク1時間平均利用回数(休日)
 

検討結果2

トイレ占有時間に関する検討を行う。

図3に月別平均占有時間の推移を示す。年間平均値は[MB]329秒、[WB]133秒、[WU]235秒であった。既報と同じく、夏は短く冬に長くなる傾向がある。これは、衣服量(上着)や汗の有無などが影響しているものと考えられ、その差は[MB]44秒、[WB]11秒、[WU]18秒であった。

図3 月別平均占有時間(全施設)

図4に平日と休日の占有時間の比較を示す。休日平均値は[MB]307秒、[WB]131秒、[WU]219秒であった。[WU]は[WB]より88秒長く、[MB]より88秒短い。また休日より平日が長くなる傾向がある。これは、休日は家族同伴が多いため長時間化しにくいと考えられ、その差は[MB]39秒、[WB]4秒、[WU]29秒であった。休日の平均値と中央値の差分は、[MB]63秒、[WB]38秒、[WU]59秒であった。

図4 平日と休日の占有時間の比較(全施設)

図5に休日占有時間の10秒毎累積比率分布を示す。平均値は累積比率の[MB]で約63%、[WB]で約73%、[WU]で約65%、であった。また10分以上の長時間占有は[MB]9.2%、[WB]1.2%、[WU]4.4%であった。[MB]において、長時間利用者が平均占有時間を引き上げている。

図5 占有時間の累積比率分布(全施設)(休日)

図6に利用ピーク時間帯における休日平均占有時間を示す。ピーク時平均は図4に示す全時間平均より長く、[MB]321秒、[WB]134秒、[WU]231秒であった。施設間差の最大値は、[MB]102秒差、[WB]38秒差、[WU]123秒差であった。これは図3に示す季節差より大きく、同じ商業用途であっても施設によって占有時間が異なることが確認できる。

SHASE-S(空衛学会規格)では、男ブース300秒、女ブース90秒となっており、いずれも長時間化していることが確認できる。

図6 利用ピーク時間帯における平均占有時間(休日)

検討結果3

トイレ混雑度、待ち行列発生有無の推定に関する検討を行う。

図7にトイレ混雑度の1指標である利用ピーク時間帯における平均時間占有率を示す。休日平均値は[MB]44%、[WB]36%、[WU]27%であった。[MB]は占有時間が長く、相対的に時間占有率も高くなる。

図7 利用ピーク時間帯における平均時間占有率(休日)

時間占有率では集中利用タイプか分散利用タイプかで解釈が異なり、また、トイレの規模により、待ち行列の入れ替わり時間に要する時間も異なるため、「待ち行列の発生有無」を把握することは難しい。

そこで、図8に休日ピーク1時間における平均時間占有率と入れ替わり時間差率の比較を示す。器具別に利用開始時刻と一つ前の利用終了時刻の差が閾値以下の回数を集計した後、合計値で除した値を入れ替わり時間差率と定義した。この数値は待ち行列の発生有無に関連する指標と考えらえる。これを見ると、平均時間占有率が高い[MB]よりも[WB]は入れ替わり時間差率が相対的に高く、待ち行列発生率が高かったと推定される。また、[WU]でも入れ替わり時間差率10%以上が複数あり、定期的に待ちが発生していた可能性が示唆される。

図8 平均時間占有率と入れ替わり時間差率の比較(休日)

まとめ

本稿では、利用回数と占有時間および混雑度の観点にて、車椅子使用者用トイレ( [WU] )と男女ブースとの利用実態の比較を行った。

今後の課題を以下に示す。

  • 本調査では[WU]利用者が車椅子使用者か否かといった種別詳細が得られていない。待ち行列調査含め、詳細な利用調査データを取得して利用特性を詳細検討すると共に混雑度・待ち発生推定の精度検証等が必要である。
  • 今後は、本調査で得られた占有時間等を入力値として[WU]の設置数・配置の検討を行う。

関係企業

本業務は国立研究開発法人建築研究所の「公共建築物におけるバリアフリー設備の適正規模や配置に関する研究」 の一環として実施した。

・本調査データは株式会社バカン社から提供を受けた。

・本研究はコマニー株式会社に検討協力をいただいた。

関連プレスリリース記事:https://www.comany.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/08/releaseIoT_toilet1101.pdf

論文・発表等

日本建築学会大会学術講演梗概集/2025
・車椅子使用者用トイレの規模算定に向けたトイレ利用実態調査:占有時間からみた男女ブースとの比較

関連URL

トイレ利用実態の計測による適正規模算定と空間計画検討支援

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