CASE

Wi-Fiセンサを用いた豊洲地区の回遊行動分析

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概要

東京都豊洲地区を対象に、Wi-Fiセンサを用いて、エリア内の移動滞在傾向・回遊行動を調査分析した結果を報告する。

背景と課題

  • 背景:センサやAIカメラ、スマホアプリ等による人流データの取得により、来訪者の行動を時系列で連続的に捉えられるようになった。防災・交通・観光といった地域の課題や人々のニーズに対して、人流データを活用することによって、より的確で機動的なまちづくりの検討が可能な社会に変化しつつある。
  • 課題:現在人流データの主流であるGPS位置情報データでは、緯度経度を精度よく把握できる利点はあるものの、専門業者から長期間の日別データを購入する場合、費用面が高くなることが懸念される。

目的

  • 本検討では、近年都市開発が進み、来訪者増加が進む東京都豊洲地区を対象としてWifiセンサでの人流調査を行い、訪問者数・滞在・移動、という3つの視点から、豊洲地区の回遊行動を把握することを目的とする。
  • また上記をふまえ、スポット周辺エリアの来訪者行動を定量的に把握することで現状の地域課題の洗い出しを行うことを目的とする。将来的には、シミュレーション技術との連携による比較分析や予測により、データの価値を最大限に引き出すことを目指す。

調査概要

  • 対象地域:東京都江東区豊洲地区
  • 調査手法:Wi-Fiセンサによる人流プローブ調査
  • 調査期間:2024年9月21日(土)9:00~19:00
  • 調査機器:歩道上の計5箇所に センサ機材を配置。(警察に事前申請済み)
  • 調査案内:弊社ホームページにて事前告知を実施。取得データの詳細、利用範囲、取り扱いも告知資料に記載
図1 調査対象地域と現地調査の様子

調査方法

道路上に配置したセンサ機器によって、歩行者のスマートフォンなどの端末(以下、計測対象端末)から発せられるWi-Fi信号を受信し、信号に含まれる端末識別情報(以下、SSID)より、信号を発信した計測対象端末がセンサ付近に存在することを検知する。SSIDを照合することにより、地域内での移動・滞在行動を分析する。

図2 移動・滞在行動のイメージ
図3 計測範囲の目安

備考:WiFiセンサ調査データとGPS位置情報データの比較

現在人流データの主流であるGPS位置情報データでは、緯度経度を精度よく把握できる利点はあるものの、専門業者から長期間の日別データを購入する場合、費用面が高くなることが懸念される。 Wi-Fiセンサのメリットは、長期間の人流データを安価に取得しやすいこと。また同じ手法で外国人観光客の移動データをとりやすい点が挙げられる。Wi-Fiセンサの常設が可能な箇所やインバウンド観光客が多い訪問先では、Wi-Fiセンサ調査を適用するのも一案である。

分析方針

集客力があり豊洲地区における主要な訪問先・観光地である、チームラボと千客万来を主な分析対象とする。

  • チームラボプラネッツ
    デジタルアート美術館。2018年にオープン。 2023/3~2024/3間訪問者数が250万人を記録。 外国人は総入館者数の約7割。
  • 千客万来
    豊洲市場に隣接する商業施設。2024/2に開業。食を提供する商店街と温浴施設で構成されている。

図4 着目する施設

分析結果1:各訪問エリアの滞在・通過人数

集計方法

  • 訪問先別でユニークID数を集計
  • 1つのID≒同じ人物

分析結果

  • チームラボ、千客万来のいずれか訪問したのはID総数の過半数
  • 訪問者比率
    チームラボ:千客万来:両方 ≒ 6:3:1
    両施設を訪問した人数は1割のみ。2つの施設の訪問者は異なる属性を持っていると推測される。千客万来開業半年で知名度はまだ低い可能性があり、今後2つの施設の相乗効果が期待される。
  • 施設の訪問者のうち、その他の場所に訪問したのは1/4
    その他エリアへの回遊性が高まることにより、地域活性化の余地があると考えられる。
図5 各訪問エリアの滞在・通過人数

分析結果2:各訪問エリアの滞在・通過人数の時間変化

集計方法

  • 9:00~19:00の間に30分毎に各エリアのユニークID数を集計
  • 4つの時間帯別でユニークID数を集計

分析結果:訪問者が多い時間帯

  • 千客万来:
    時間帯:13時前後
    時間:10:30~14:00
    ※ 9時からの計測なので、早朝に千客万来・豊洲市場を訪問した人は対象外
  • チームラボ:
    時間帯:15時前後~18時前後
図6 各訪問エリアの滞在・通過人数の時間変化

分析結果3:訪問直前/直後の訪問先

集計方法

  • 施設の訪問直前/直後に検出されたエリア別のID数を集計

分析結果

  • 千客万来の訪問直前・直後に、チームラボ、駅西エリアを訪問したIDが多い
  • チームラボの訪問直前・直後に、駅西エリアを訪問したIDが多い
    地下鉄豊洲駅方面を経由したIDが多いと推測される
図7 訪問直前・直後の訪問先別のID数%
図8 訪問直後の訪問先別のID数%のイメージ図

分析結果4:各エリアの滞在時間

分析1:来訪者の滞在時間分布

集計方法

  • IDが下記のエリアに検出された場合を、分析対象とした
    パターン1:千客万来のみ
    パターン2:チームラボのみ
  • 滞在時間=最初と最後の検出時間の間とした
    滞在時間15分以上のIDを分析対象とした

分析結果:訪問者の滞在時間傾向

  • 千客万来:
    ID数が最も多い:30分~60分
    80%のIDが180分以下
  • チームラボ:
    ID数が最も多い:90分~120分
    80%のIDが150分以下
図9 エリア別の滞在時間分布
図10 エリア別の滞在時間累積

分析2:来訪者の滞在時間帯

集計方法

  • 最初と最後の検出が含まれる時間帯別でID数を集計
  • IDが下記のエリアに検出された場合のみ、集計対象とした
    パターン1:千客万来のみ
    パターン2:チームラボのみ

分析結果:滞在が多い時間帯

  • 千客万来
    1. 15時前後
    2. 13時前後~15時前後
    3. 10時前後~18時前後
  • チームラボ
    1. 18時前後
    2. 10時前後~13時前後
    3. 10時前後~18時前後
図11 滞在時間帯別の割合(千客万来)
図12 滞在時間帯別の割合(チームラボ)

まとめ

  • 実施概要:街区レベルの移動・滞在状況を把握するために、豊洲地区を対象として、複数箇所にWi-Fiセンサを設置して人流調査を実施した。調査エリアのうち、集客力が強く重要な観光地となっている、千客万来とチームラボを主な分析対象とした。
  • 分析結果:訪問者数・滞在・移動、という3つ視点から、豊洲地区の回遊行動を把握した。
    • 訪問者数:
      チームラボ、千客万来のいずれかを訪問したのは訪問者数の過半数。2つの施設は豊洲地区の重要な訪問先。
      両方とも訪問した人数は1割のみ、2つの施設の相乗効果が今後期待される。
      施設の訪問者のうち、その他の場所に訪問したのは1/4、さらに地域活性化に資することが今後期待される。
    • 滞在
      滞在時間:千客万来は30分~60分、チームラボは90分~120分
      滞在時間帯:千客万来は15時前後、チームラボは10時前後~13時前後
    • 移動
      2つの施設の訪問の直前・直後、施設の東側のエリアを訪問したIDが多い。地下鉄豊洲駅が主な利用駅と推測される。

計測機器、計測サービス

本調査ではピーディーシー株式会社のWi-Fiセンサ機器を適用した。

ピーディーシー株式会社

関連URL

調査時における弊社ホームページでの告知案内資料は下記の通り。

ベクトル総研:豊洲地区の人流・車流計測の実施概要

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